カテゴリー: お酒の知識とカクテル

知識系コンテンツの柱

  • 通が知る「食後酒」の愉しみ。グラッパとマール、残されたブドウの魂

    通が知る「食後酒」の愉しみ。グラッパとマール、残されたブドウの魂

    ブランデーの兄弟?グラッパとマールのユニークな世界

    前回、ブランデーの奥深さをお話ししました。
    ブランデーはブドウの果汁を発酵させて造られますが、「グラッパ」や「マール」は少し違います。
    これらは、ワインを造った後に残る「ブドウの搾りかす(果皮や種)」を再利用して造られる蒸留酒なのです。
    イタリアでは「グラッパ」、フランスでは「マール」と呼ばれ、それぞれがその土地の個性を映し出しています。

    「食後酒の女王」と呼ばれる理由

    グラッパやマールは、食後の消化を助ける「ディジェスティフ(食後酒)」として親しまれています。
    食後にゆっくりと、ストレートで味わうのが一般的です。

    • 独特の香り:
      ブドウの品種や搾りかすの質によって、青々しいブドウの香り、花の香り、時にはハーブのような複雑な香りを持ちます。
    • クリアな味わい:
      無色透明なものが多く、熟成させたブランデーとは異なる、素材そのもののピュアな風味を感じられます。
      熟成させたものは、琥珀色を帯び、よりまろやかな口当たりになります。
    グラッパ

    バーテンダーの視点:グラッパとマールを選ぶ時

    カウンターでグラッパやマールを注文されるお客様を見ると、「おっ、通だな」と思いますね。
    私もお客様におすすめする際は、その日の気分や食事の内容に合わせて、数種類の中から香り立ちの良いものを選びます。
    少し冷やしてキリッと飲んだり、手のひらで温めて香りを立たせたりと、温度によっても表情を変えるのが面白い点です。

    これらはカクテルベースとして使うことは稀で、その独特の香りをストレートで楽しむのが主流です。
    とはいえ注文がなかったわけではありません。
    そんな時はおおよそブランデーと同じ扱いで調合しつつ、独特の香りを失わないよう副材料は最低限に絞ります。
    多くて2種類位で良いでしょう。
    土地産のワインと合わせてみても会話が広がりそうですね。

    ブランデーとの違い:ブドウの「残り物」が持つ無限の可能性

    ブランデーが「ブドウの果汁(エッセンス)」を凝縮するのに対し、グラッパやマールは「ブドウの固形物(ボディ)」から生命を吹き込みます。
    この「残り物から生まれる美学」こそが、グラッパやマールの最大の魅力です。
    ブドウ農家が、丹精込めて育てたブドウを最後まで無駄にしない、そんな職人の魂を感じさせるお酒でもあります。

    香り豊かなお酒

    結びに

    「食後のデザートはちょっと重いな」という夜に、ぜひグラッパやマールを試してみてください。
    ブドウの香りが口いっぱいに広がり、食後の余韻を上品に締めくくってくれるでしょう。

  • 香り、色、そして歴史。ブランデーが「お酒の芸術品」と呼ばれる理由

    香り、色、そして歴史。ブランデーが「お酒の芸術品」と呼ばれる理由

    ブランデーは「果実の魂」

    ブランデーを一言で言えば「果実酒(主に白ワイン)を蒸留して樽で寝かせたもの」です。

    「コニャック」や「アルマニャック」という名前を耳にしますが、これらはフランスの特定の地方で作られたブランデーの呼称です。
    シャンパンが特定の地方のスパークリングワインを指すのと同じですね。

    熟成年数と呼び名(格付け)のルール

    ボトルに書かれたアルファベットは、熟成の長さを表しています。
    一般的な目安をまとめました。

    呼称意味特徴
    V.S.Very Special熟成2年以上。フレッシュでカクテル向き。
    V.S.O.P.Very Superior Old Pale熟成4年以上。香りが立ち始め、ストレートでも。
    Napoleonナポレオン熟成6年以上。深いコクと歴史を感じる重厚感。
    X.O.Extra Old熟成10年以上。非常に複雑で豊かな香りの到達点。
    Hors d’âgeオル・ダージュ「年齢を超越した」の意。最高級の熟成品。
    (現在はX.O.と同等以上)

    バーテンダーの視点:ブランデーを「色」と「香り」で操る

    私がカクテルを作る際、ブランデーは「サイドカー」や「アレキサンダー」のように、甘く柔らかい一杯に仕上げる時によく選びました。

    ただし、注意が必要なのはその「深い真紅(琥珀色)」です。
    非常に色が強いため、他の色と合わせづらい。
    あえて色を活かして赤や青系と合わせるか、ミルクやチョコレートで濁らせてしまうのが正解。

    また、個人的には過度な酸味はあまり。ライムジュースなんかをオリジナルカクテルで使ったこと無いですね。

    何より、豊かな香りを壊さないよう、程よいシェイクで空気を含ませ、香りを「開かせる」ことが大切です。

    最高のナイトキャップ(寝酒)として

    Brandy & Chocolate

    ブランデーは温めても美味しいお酒です。
    おやすみ前に少し温まったグラスで香りを楽しみながら飲む一杯は、最高の癒やしになります。

    また、ブランデーはチョコレートとの相性が抜群です。
    食後にしっとりと、少し贅沢なチョコと一緒に楽しむ時間は、大人だけの特権と言えるでしょう。

    飾りたくなる「ボトルの意匠」

    ブランデーはボトルそのものが美術品のように美しいものが多いです。
    飲み終わった後も、瓶だけで売買されることもあるほど。
    お気に入りのボトルを残しておき、別のお酒を入れたり、ライトを当てて飾るのもホームバーの楽しみの一つです。

    様々な意匠

    次回は、同じブランデーの仲間でも少し変わった「グラッパ」や「マール」についてお話しします。

  • 甘く情熱的な「ラム」の世界。プロが教える、カクテルからストレートまでの愉しみ方

    甘く情熱的な「ラム」の世界。プロが教える、カクテルからストレートまでの愉しみ方

    ラムは「サトウキビ」から生まれた情熱のお酒

    「ラムって何?」と聞かれたら、まずはこう答えましょう。
    「サトウキビを原料とした、蒸留酒のことですよ」
    サトウキビ由来の独特の甘みとコクがあり、ジンやウォッカに並ぶ「世界4大スピリッツ」の一つとして、世界中で愛されています。

    サトウキビが原料

    バーテンダーの腕が試される「ホワイトラム」

    ダイキリ、モヒート……。
    ホワイトラムを使ったカクテルは、どれも王道かつ人気です。
    しかし、バーテンダーにとってこれほど神経を使うお酒もありません。
    ホワイトラムは繊細で、油断すると味が薄くなりやすい。
    シェイクの技術、使う氷の硬さ、副材料のわずかなバランス。
    その一杯には、バーテンダーの修練が凝縮されています。

    フローズンやクラッシュアイスとの最高の相性

    ラムの真骨頂は、氷を細かく砕いた「フローズンカクテル」や「クラッシュアイス」との相性です。
    ラムの甘さと、レモンやライムの鮮烈な酸味。
    これらがキンキンに冷えた氷と混ざり合った時、他のスピリッツでは真似できない抜群の清涼感が生まれます。
    ライムと砂糖を潰しながら楽しむ「カイピリーニャ(カシャーサラム)」なども、ラムの仲間ならではの野性味溢れる楽しみ方ですね。

    夜を締めくくる「ダークラム」の深い眠り

    一方で、樽で熟成させた「ダークラム」は、まるでブランデーのような風格を持ちます。
    熟成年数によっては「XO」といった称号がつくものもあり、ブランデーと比べて比較的安価でありながら、ストレートで十分に堪能できる深いコクがあります。
    おやすみ前の一杯(ナイトキャップ)として。
    あるいは、冬の夜にはバターを落とした「ホット・バタード・ラム」として。
    温めることで開く甘美な香りは、心まで解かしてくれます。

    ホットバタードラム

    結びに

    カクテルで爽やかに、あるいはストレートで重厚に。
    これほど万能で、知れば知るほど面白いスピリッツは他にありません。
    次にバーを訪れたら、ぜひ今の気分を伝えて、ラムの多様な一面に触れてみてください。

  • 無色透明の奥深さ。「ウォッカ」を銘柄で選ぶ、バーでの粋な楽しみ方

    無色透明の奥深さ。「ウォッカ」を銘柄で選ぶ、バーでの粋な楽しみ方

    ウォッカは「個性のない」お酒なのか?

    「ウォッカとは何か?」と聞かれれば、多くの人が「癖がなくて、何にでも合うお酒」と答えるでしょう。
    確かにその通りで、カクテルのベースとして主役を立てる「究極の黒子」としての役割がほとんどです。
    私自身基本はSMIRNOFF Vodkaの青色を普段使用し、どのカクテルも美味しいものを作れていた記憶です。
    副材料の邪魔をしないんですよね。

    しかし、その中にもバーテンダーが「これは違う」と敬意を払う銘柄がいくつか存在します。
    今日はその代表的な3つをご紹介します。

    ウォッカマティーニ

    1. ロシアの誇りを継ぐ「ストリチナヤ(現:ストリ)」

    ウォッカの本場、ロシア産の代表格です。
    現在は「ストリ」という名称で親しまれています。
    非常にクリアでキレが良く、カクテルにした時に副材料の味をピシッと引き締めてくれる、プロが最も信頼を寄せる銘柄の一つです。

    Stoli Vodkaの公式サイトはこちら

    2. バーテンダー指定の定番「アブソルート」

    スウェーデン産のアブソルートウォッカ。
    スタイリッシュなボトルのデザインを見たことがある方も多いはずです。
    雑味がなく、非常にスムースな口当たりが特徴で、カクテルレシピで銘柄指定されることも多い、世界標準の一本です。

    Absolute Vodkaの公式サイトはこちら

    3. 桜餅の香りがする!?「ズブロッカ」

    今回、私が最も知ってほしいのがポーランド産の「ズブロッカ」です。
    ボトルの中に一本の草(バイソングラス)が入っているのが特徴です。
    これを一口飲んでみると、驚くはず。
    「桜餅」のような、甘く芳醇な香りが鼻を抜けていくのです。

    zubrowkaの公式サイトはこちら

    楽しみ方の提案:ズブロッカを「ロック」で

    ズブロッカロック

    カクテルのベースとして使われることが多いウォッカですが、このズブロッカに関しては、ぜひロックで頼んでみてください。
    氷が少しずつ溶け出し、香りが開いていく過程を楽しむ。
    それは「無味無臭」というウォッカのイメージを180度覆す、贅沢な体験になるはずです。

  • ジンとは。ウォッカとの違いと使い分けの美学

    ジンとは。ウォッカとの違いと使い分けの美学

    結局、ジンとは何なのか?

    「ジンの歴史」や「製造方法の詳細」をここで長々と語るつもりはありません。
    今の時代、正確なデータはAIがすぐに教えてくれますからね。

    もしあなたが誰かに「ジンって何?」と聞かれたら、今後はこう答えてみてください。
    「ジュニパーベリー(ネズの実)で香り付けをした、蒸留酒のことですよ」 これだけで十分です。
    農作物由来のスピリッツに、ジュニパーベリーの香りを纏わせる。
    もしこの香りがなく無味無臭であれば、それは「ウォッカ」の領域になります。

    「ドライ」なロンドン、それ以外の個性

    味の傾向を聞かれたら、こう整理しましょう。
    「ロンドンドライジンは名前の通り辛口(ドライ)でキレがあるもの」それで十分です。
    他のジンに興味が出てくれば、様々なボタニカルのあるジンをバーテンダーに聞いてみましょう。
    まずはドライ・ジンというものがあるということだけ。

    バーテンダーがジンを手に取る「3つの理由」

    ジン&ウォッカ

    マティーニ、ホワイトレディ、ジントニック……。数多くのスタンダードカクテルで主役を張るジンですが、私がオリジナルカクテルを考案する際、ジンをベースに選ぶのには明確な「条件」がありました。

    1. 清涼感を際立たせたい時
      ジュニパーベリーの香りは、圧倒的な清涼感をもたらします。最初の一杯に相応しいジントニックがその最たる例です。
    2. 香りに「奥行き」と「変化」をつけたい時
      ウォッカでは少し味気ない。かといってラムやテキーラでは主張が強すぎる。そんな時、複雑なボタニカル(香草)の香りが、カクテルに立体感を与えてくれます。
    3. 「透明感」のある色合いを狙いたい時
      副材料の透明度を活かしたい時、あるいは宝石のように澄んだ色を表現したい時、無色透明なジンは最高のパートナーです。

    ウォッカとジンの使い分け:プロの微調整

    例えば「紫色のカクテル」を作る場合を考えてみましょう。 ぶどうリキュールやパルフェ・タムールを使用する際、メインのアルコールをどう選ぶか。

    • ウォッカを選ぶ時: リキュールの風味(ぶどうのような甘さや香り)をダイレクトに、かつクリアにアルコール度数だけ上げたい場合。
    • ジンを選ぶ時: ベーススピリッツ自体のボタニカルな香りとリキュールを調和させ、エッセンスの層を厚くしたい場合。

    このように、プロのカウンターでは「何をメインに感じさせたいか」によって、1オンスの透明な液体を使い分けています。

    ジントニック制作中

    結びに

    正解は一つではありませんが、この記事を読んだあなたが次にバーでジントニックを頼む時、「この清涼感はジュニパーベリーの魔法なんだな」と少しでも感じてもらえたら嬉しいです。